杏仁豆腐は夢を見る

たまに長い文章を書きたくなった時に使います。

Our bad mgnet 感想

Twilogが亡くなったので舞台の感想とかはなるべくブログに残しておきたいと思ってるんだけど、続くかはわからない……。

 

Our bad magnet 見てきた。小西成弥くん目当てで行ったけど、とても良い舞台だった。

 

スコットランドの海辺の街で、昔死んだ仲間のことを回想しながら進む会話劇。

ここ数年、死の受け止め方について考えることが増えて、歳をとるに従ってそれが変わってきているような気がしている。だから、突然仲間を失って、3人がそれぞれ行動して、思いを吐露するのを見ながら、全員に共感できる部分があったように思う。

逆に、嫌悪感を抱く部分もあったけど。

 

死に意味を持たせることに潔癖なまでに拒否するフレイザーの考え方は昔の私に似ている気がした。今は少し違ってて、生きている人間が死んだ人の思い出を語り合ったり、生前の思いを継ぐだとか、受け止めるだとか、そういう心境に至ることを、前より受け入れている。

それは乱暴な言い方をすれば事実は関係なくて、残された人間が生きていくために必要なことで、そういう生き方も悪ではないというか、そうやっていくしかないのだと思うようになった。

だからポールのこと私は罵れないし、でも醜悪だなと思う瞬間もあって、とても悲しかった。

 

アランは一人前の仕事人になって、難しい専門用語を駆使するようになっても、自分の気持ちを語る言葉は持たないんだなと思うと切なかった。ものすごく目と、表情で語る演技に引き込まれた。

きっと、ゴードンの死に繋がる布石は無数にあって、アランの言葉がすべてじゃないだろうけど、それでもアラン自身が自分のせいだったのだろうかと、考えないわけが無いと思う。きっと彼には彼の苦しみがあって、でもそれを語ることはなくて、3人で集まるあの日、なにか終着点を見つけたい気持ちで必死だったんだろうなと。花を降らせる機械を作っていた彼の気持ち、2人を待つ間の緊張した面持ちを見て感じた。

 

ゴードンを演じる小西くんは吸い込まれそうな儚さがあって大変良かった。魅力的な俳優さんだなぁと、予感が当たったような気がして嬉しかった。

悪い磁石の話を語るゴードンは、誰の記憶のゴードンだったのかなぁと思うけど、力強い語りも、ビジュアルもとてもよかった。ゴードンは誰ともいっしょに居られないことが寂しくてたまらなくて、みんなの心に残っていたくてあんなことをしたのかなと、この物語を聞くと思うけれど、フレイザーもそう思ってたから、この物語を選んで読ませたのかなぁ。

舞台ギリギリで思い詰めたような表情をした後、ぱっと身を翻して飛び込むゴードンの姿、忘れられない……。

 

結局のところ、3人が集まったって、事実なんて永遠にわからないし、思いを重ね合わせることは出来なくて、美しい花が一面に降り積もっても、またそれぞれの暮らしに帰っていくだけなんだろう。

それでも、花を見上げる三人を見ながら、きっと四人には楽しい瞬間も確かにあって、どうして居なくなってしまったんだという気持ちもあって、だからこそずっとゴードンのこと、ゴードンの死のこと考えてるんだと思いたいなぁ、と思った。

罪悪感や怯えではなく。人はとても多面的なものだと思うから。