杏仁豆腐は夢を見る

たまに長い文章を書きたくなった時に使います。

いとしの儚 感想なぐり書き

悪童会議旗揚げ公演「いとしの儚」7月10日夜公演見たので感想メモ。

 

 

大体の舞台がそうだけど、推しの信長くんが出てなければ自ら行くことはなかっただろうなあ。という舞台。ただ、「海のものとも山のものとも……」という気持ちは薄かったかな。なんせ、スタッフがほぼ刀ミュだから笑 

私は刀ミュが好きだし、有名な脚本らしいし、そんなひどいもんは出てこないでしょう、という気持ちが強かったな。ただ、気合いの入りまくったインタビュー読んでいて、推しがなんで呼ばれたのか、そこでちゃんと自分の役割を果たせるのか、色々と心配だった。役が発表されてさらに不安になっちゃって、(ビジュアルは最高だったけど)先に予習しとこうと思って、公開されてる戯曲読んじゃったりして。

でも結果として、推しはめちゃくちゃ……めちゃくちゃよかったです……ちゃんとお芝居集団の中でお芝居してた。今まで見た中で私は一番芝居に集中して見ることができた気がする。いつもなんか、雑念がすごくてさ……周りより出来てないとか、顔は最高なんだけどなとか……。今回はそういうのなくて、ちゃんと座組の一員として演劇してる推しを見られて、ああ、俳優推してるんだなあと実感できました。最近、地方タレント推してるような気がしてたからね!

一緒にやってる人たちの熱量に影響されて、きっと引き上げてもらってるのだと思う……たくさん怒られもしてるんだろうな(たぶん)すごい良い経験になっているのではないかな、とえらそうにも思ってしまいます。まあ、あと二回あるからまだ油断はできないけど、じっくり味わいたいなあという気持ち。うれしいね。頑張ってね。

推しの演じる三木松は、「オカマ」と呼ばれてる。ゲイで、性自認は女性、ということなんだと思う。何歳くらいなのかはわからないけど、時代設定的にも、女郎屋の奉公人という立場からも、色々と苦労しているのだろうと思う。賭場に出入りするような和尚と付き合ってるけど、でも和尚を慕う礼儀正しい仕草とか、儚に対する物言いとかから、教育も受けてきているし、心根は優しくて真面目な人なんだなあとわかる。明るくて、笑えるキャラクターでもあるのに、儚に接している時は、慈愛に満ちた、母のようでもいなければいけない。えー、難しいね。難しいけど、かわいくて優しくていい役だった。殺されちゃうけど、観客に惜しんでもらえそうな、そういう役になってたと思うな。

推しのこと抜きで舞台を見ると、本当に儚役の七木奏音さんが素晴らしく……。舞台上でまぶしいくらいに光輝いていました。かわいらしく、美しく、そして何より力強かったな。戯曲を読んだ時と全然印象が違ったのは、彼女のはかながとても力強かったからだと思う。夢を諦めない姿、かっこうよかった。

私は、戯曲を読んだ時、最後にはかなが抱いてくれって言って、なんで鈴次郎は抱いたんだよ!意地でも引きはがして人間にしてやれよ!と思っちゃったんだよね……これはもう、ここに納得出来ないんだったらこのお話見るの向いてないよって話なんだけどさ、完全にnot for me ってやつなんだけど……本当にそう思っちゃったの。なんていうか、私は性行為を行うこと、好きな人とつながることの重要さが、あんまりわかってないんだろうね。「死んでもいいから、好いた男とひとつになりたい」みたいな価値観はわからない。いや、はかなの場合は「寂しい思いをしているこの人をひとりぼっちにしたくない」だったのかもしれないけど。

でもさあ、二人の心は通じ合ってたわけじゃん???抱きしめて、体温を分け合わなくたって、はかなと出会えて、夢を知ったことで、鈴次郎の心はもう孤独じゃなかったと思う。自分の命と引き換えにしても、はかなだけは助けたいって思えた瞬間があったわけじゃん。だったらあそこで鈴次郎ははかなを解放してあげるべきだったよ……とついつい思ってしまうんだよな。だって、中盤ではかなは「本当は鈴次郎と一緒になりたかったけど、ひとりになってしまった。それでも夢を諦めない」って堂々と宣言してるんだもん。なのに最後はこれが私の夢だよ、って言って花になっちゃう……なんで!と思わずにはいられないよ。

でも、七木儚があんまりにもまっすぐ、これが私の夢だよ!私は水になんかなるもんか!っていうから、そうかあ……ってなっちゃった。そうかあ……おまえが言うならしかたねえよな……みたいな。すごい説得力なんだよね。心の底から、そう思ってる、そうするしかないっていう。こりゃあ鈴次郎も断れないわ~。って。あなたが決めたならそうなんだね、っていう。舞台の面白いとこだなあと思った。

でも次回見たら結末変わってないかなって思っちゃうのは許してほしい←

そもはかなの夢自体が「結婚して自分の子どもを産んで家族を持つ」みたいなのがちょっと……ていう意見も見たけど、私はそこはそんなに、だったかな。時代設定的にも、納得できるかなって。はかなは、お寺で教育を受けたとき、昔話とかも読んでいたのだろうし。すてきなひとに見初められて結婚すること、後を継ぐ子供がいることって、昔話だと完全に幸せ要素だし。あと、子供を持つことができない三木松が、そういったことに憧れを持って語っていた可能性もあるかなあとか。現代でだって、自分の家族を持つことは、立派な、素敵な夢だと思うし。選択肢が増えたというだけで。

ただ、選択肢が増えた現代で、このお話が面白いかって言われると、まあ確かに?と思わなくはないよね。これを繰り返し上演する、そして絶賛される面白さってどこにあるのだろう、とは思ったかなあ。全然つまらない舞台ではないし、心揺り動かされるところもあるし、演じている人たちのエネルギーはすごいけど。

最近、舞台は総合点だとひしひしと感じるのですが。今回も、お話が心から最高!って思えたわけではないんだけど、他できっと感動しているのですよね。はかなが舞台上で放つ眩しいパワーとか、推しの見せてくれる意外な成長とか。音楽や照明、演出とかももちろん。だから、総合点で良い点がでれば、それは私にとっては良い舞台だったってことなんだろうけど、でもやっぱ脚本の配点割合が高いから、減点されてると目にはつく、みたいな。

ここまで書いてて、私がもっと鈴次郎の孤独に心を寄せていれば全然ちがう話ができたような気がしてきた。自分としては十分心を寄せていたつもりだったんだけど、なんか、嫌いにならない努力、に近い感情だった気がしてきたな。この男の孤独を理解しよう、理解すれば話も理解できる、みたいな。あえてクズだな~、とか、最低だな~、とか、そういう感情を持たないようにしていたのかな、みたいな。戯曲を事前に読んだせいで、無意識に不快指数を下げようとしていたのかも。次はもう少し素直な感情を意識して見てみますね。

 

戯曲読んでてこの台詞はあかんやろ、ってとこが無くなっていたり、他にも問題があると指摘していた部分が次の公演ではカットされていた、といったつぶやきも見たし、そういうブラッシュアップはされてるみたいなので、そこはよかったのかなあ。でも見るひとから見れば、もっと変えたほうがいい部分もありそうな気はする。ブラッシュアップしてでもこの演目をやりたい、という気持ちは伝わってくるなと思いました。そこまでしてやりたいのか……そうか……。

 

最近悲しい話ばかり見てるので(ムーランルージュオイディプス王など)もっと楽しい話が見たいな! 私が悲劇につかれてるのかもしれない、と思った夜でした。でも人類は紀元前から悲劇が好きだからな……。いや悲劇だって面白いのだけどね。うーん。

心から面白い!と思える舞台探しの旅はまだまだ続くのであった。